「・・・誕生日、おめでと」











弔いの言霊













「・・・今日で、初めて会ってから丁度18年経ったね」


唇から放たれた言葉に行き場はなく、暫く宙をさ迷った後、力無く消え失せた。
どんな言葉をかけても結果は同じ。再び、言葉は空気中に吸い込まれる。


「・・・いの。・・・やっぱりここだったね」
「・・・・・・・・・・・・」

後ろで、幼なじみの声がした。普段なら作り笑いでもして振り返るのだけど・・・
今はそれもできそうにない。
気休めの言葉すら出てきそうにないのだ。


「・・・いい場所だよね、ここ」
「・・・・・・・・・」
「・・・僕もいのも、大好きな場所」
「・・・・・・・・・」

「・・・この前さ、アスマ先せ──」
「・・・チョージ」
「・・・・・・・・・なに?」
「・・・・・・私ね。」















「・・・・・・結婚することになったの」

「・・・・・・そうなんだ」


聞き手であるチョウジの気配が一瞬揺らいだ。それでも、声はいつもと変わらない。
ほんの数日前のこと。それが決まったのは。
断る理由が見当たらないほど、完璧な相手だった。小さいとはいえこれでも山中一族の娘。一族を継いでいくのが、私の定めなのだ。
パパは申し訳なさそうに何度も私に頭を下げてきた。無理なら断ってもいい、と。


「・・・でも・・・断らなかったんだね」
「・・・・・・・・・うん。」


もう、立ち止まってはいられないから。























3年前のあの日。アイツは私の目の前から姿を消した。


彼の隊は、全滅した


隊員の1人は それだけ告げて死んだ。


何も残っていなかった。


だからこそ僅かな希望にすらすがった。


でも、アイツは現れなかった。






─何があっても帰ってくっから。・・・心配すんな






約束は守られずに。


「・・・馬鹿よね。
 ・・・もしかして、って、考えちゃうの」
「・・・そういうもの じゃないかな」


アイツが約束を破るはずない、と。
どうしても、認める気は 起きなかった。


「・・・もう・・・待つのはやめるの」


あれから、一歩も進めていないから。

進まなきゃ いけないから。

それに・・・



「・・・待つのってね・・・






・・・本当に 苦しいんだよ・・・」


逃れたい。


「・・・でも・・・アイツを忘れたくなくて・・・」


好きだから。大好きだから。
忘れた方が、楽なのかもしれない。けど


「・・・私・・・悪い子かなぁ・・・」
「そんなことないよ。・・・シカマルは、いのが苦しむのを望んでないと思う」

「・・・そう、かなぁ・・・」


涙が、止まらない。
流し損になると恥ずかしいから、と、笑って泣かないようにしていた
大丈夫と声をかけられれば大丈夫よ、と
落ち込む者を見ては大丈夫よ、と。
その、涙が。
泣いたら 認めることになるから・・・

チョージの気配が ゆっくり近づいてきた
肩に置かれた手は温かくて
温かくて。


「・・・お誕生日、おめでと」

「・・・明日は、二代目猪鹿蝶の誕生日だよ」

「・・・・・・うん・・・
 ・・・ありがと」


涙は まだ止まらない。
でも、止まらなくていい。
認めるよ。全部


「・・・ありがと。」


風が 吹き抜けた。













「明日・・・
 ・・・お墓参り、行こう?」

「・・・そだね。」


アイツは眠っていないけど。

きっと、心くらいは帰ってきてるから。

・・・会いに行こう


「・・・お帰り、って 言わなきゃねー」
「・・・おめでとう、も だよ」
「・・・うん。」








お帰り、シカマル。


遅くなってごめんね?


任務、お疲れ様。


大変だったよね。


苦しかったよね?


3年、経っちゃった。


知ってる?私18歳になったよ?


約束、守れなかったけど。


今まで、楽しかったし!


絶対、アンタのこと忘れないし。







何時までも、大好きだからね?